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Lee-Byung-hun addicted

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最終話

「慶州にはひとりで行ってきて」最終話



ビョンホンがそう叫んでいる頃、

揺は逗子の家でうどんを作っていた。

幸太郎も綾もだいぶ熱は下がって容態は落ち着いていた。

揺は帰って早々溜まった家事を片付けたり、

両親の世話に追われていて、気づくともう夜も11時を回っていた。

食べそびれた自分ひとり分の遅い夕食を作りながら

今日一日のことを考えていた。

ビョンホンと別れてからまだ半日しか経っていないのに

ずいぶん前のことのように感じる。

彼のことを思い出すと自然と顔がほころんでしまう自分が妙に可笑しい。

それから、飛行機で偶然再会したギジュのことも思い出していた。

彼は東京のホテルに宿泊するといい羽田で別れた。

「次にお会いするときはビョンホンさんとご一緒の時かもしれませんね。

是非よろしくお伝えください。

今日は本当にありがとう。」

彼は別れ際に笑ってそう言っていた。

勝手に自分の思ったままを言ってしまったが、

うまくことが運ばなかったらどうしよう。

揺は何だか心配で仕方がなかった。

「あんなこと、言わなきゃ良かったかしら。」

自分のことならば失敗しても諦めがつくが

人のことだとそうもいかない。揺は少し後悔していた。

そんな時、携帯からロマンスが流れた。

ビョンホンからのメールだ。

「まだ、起きてるかい?月がとっても綺麗だよ。」

文字を見たとたん、

彼の声が無性に聞きたくなって揺はとっさに電話をかけていた。

「もしもし、ビョンホンssi、声がね。聞きたかったの。」

揺は気づくと夢中でそう言っていた。

いつもと少し様子が違うことに気がついたビョンホンは

「ご両親どうかした?なにかあったの?」

そう、優しく尋ねた。

「ああ、二人は大丈夫。

心配かけてごめんね。

そうじゃなくて、ちょっとね心配事。」

揺はそういうと今日飛行機の中であった出来事について話をした。

「ふ~ん。そうか・・・」

「何だか私余計なこと言っちゃった気がしてきて。

私が言ったことでミンチョル君や他の人が傷ついたらと思うと

不安になってきたのよね。」

「う~ん。

でも、僕がもし相談されたとしても同じように答えると思う。

君の判断が間違っていると僕は思わないよ。

彼は立派な大人なんだから最後は自分の責任で判断するさ。」

「そうよね。そうよね。あ~、何だかすっきりしたわ。ありがとう。」

「君って単純だよね。」

笑いながらビョンホンが言った。

「貴方に言われたくないわね。」と揺。

「しかし、すごい偶然があるもんだね。

意外とそっちが運命の人だったらどうする?」

ビョンホンが尋ねた。揺はふと考え込んだ。

「もしもし。もしかして考え込んでた?」

ビョンホンは笑いながら言った。

「貴方、「甘い人生」のプロモーションの時、

「人間はいつでもどんな些細なことでも日々選択しながら生きてると思う。」

って言ってたわよね。

もし、運命の人が二人現れたら

私が選択していいってことなのかな。

それとも一人は本物で一人は偽物なのかしら。」

ほんの冗談で言ったつもりのことに

真面目に考えて答える揺に正直ビョンホンは驚いていた。

「まさか、気持ちが揺れてるの?」

そばにいたらそれが取り越し苦労だということはすぐにわかったのに

好きな気持ちが大きいほど妙に不安になるもの。

「まさか。ただ。」

「ん?」

「もし、貴方が私のたった一人の運命の人だとしたら

私がギジュさんに二度も偶然に会ったのは

他に何か理由があるのかもしれないと思ったの。

そうじゃなかったら本当に貴方が偽物で向こうが本物の可能性もあるかもしれないわね。」

と揺。

揺の言葉の感じから彼女の気持ちを感じ取ったビョンホンは

ちょっとほっとしていた。

言葉とは裏腹に彼女の口調は明らかに

「貴方が本物に決まってるじゃない」

といっていたから。

そして、それを聞いてほっとしている自分が妙に可笑しくて笑った。

「どうしたの?」と揺。

「いや、別に」とビョンホン。

「変な人ね。」

揺はそういうと部屋の壁にふと目を向けた。

小さい蜘蛛が歩いている。

「あっ、タランチュラ。

今、目の前の壁を歩いてるわ。

彼にしては妙に小柄なんだけど」

チェ・ミンスとあまりに似つかないその姿に

そういうと揺はプッと噴出した。

「踏んづけちゃだめだよ。

そ~っと外に逃がすんだ。」

ビョンホンは面白がって笑いながらそういった。

「もう。」

揺は笑いながらそういうと

何だか殺してしまうきになれず窓のそとに「彼」を放り出した。

「そうそう、ギジュさんが今度はお仕事でお会いできるのを楽しみにしてるって」

「そう。まあ、これも縁かもしれないから考えてみるよ。

とりあえずお父さんとお母さんも落ち着いたみたいだし、

良かったよ。君もちゃんと栄養とって。身体に気をつけるんだよ。」

「あっ~~~~!」と揺。

「なにっ!」と驚くビョンホン。

「うどん火にかけてたの忘れてた・・・。煮込みうどんになっちゃった。」

「・・・・・・・」

電話口の向こうでビョンホンがおなかを抱えて笑っていた。

「とにかく、火の元にも気をつけて。

わかった?」

ビョンホンはヒーヒーいいながらそう言った。

「わかりました。」

揺はどろどろになったうどんを見つめながら言った。

「じゃ、また明日」とビョンホン。

「あんまり飲みすぎちゃダメよ。道路で寝たら死んじゃうからね。」と揺。

「はいはい。」

ビョンホンはそういいながら嬉しそうに微笑んだ。

「そうだ、年内にもう一度ソウルに来られるかい?」

「うん。お母様やウニちゃんにもご挨拶しないで帰ってきちゃったから

なるべく行くようにするわ。貴方お仕事は?」

「えっ、ず~~とOFF」

「うっそ~。もしかしてすごい怠け癖ついた?また働けるの?」

「まあね。ぼちぼちね。ソルラルが明けたらかな。」

「そうそう。

私もお母様にソルラルにはいらっしゃいねって呼んでいただいているから

1月は前倒しで忙しいのよ。

4日から仕事だし。そうそう遊んであげられないわよ。」

「みんな冷たいよな」

ビョンホンはちょっと寂しそうにそう言った。

「それだけ、皆、貴方と仕事するの楽しみにしてくれてるってことよ。

早く戻ってこいってことなんじゃない?」

「そうだね。もうばっちり充電もしたし。

来年はもっといろいろやってみたいこともあるんだ。」

「良かった」と揺。

「何が?」

「ん?貴方にやってみたいことがいっぱいあって。

やらなきゃいけないことがいっぱいあるより

やりたいことがいっぱいあった方が楽しいじゃない。

きっと来年は貴方にとって楽しい一年になるわね。

何をやりたいのかはあえて、聞かないわ。」

「何で?聞いてよ。」

「いちファンとして楽しみはとっておくわ。あ~ワクワクしちゃう。」

揺はそういうと嬉しそうにわらった。

「じゃ、そろそろ切るよ。うどん食べるんだろ?」

とビョンホン。

「あ~そうだったわ。じゃ、お休みなさい。またあとでね。」

と揺。
「ああ、お休み。またあとで。」とビョンホン。

二人は電話を切る時、いつからか「またあとで」と言うのが習慣になっていた。

不思議とそう言って別れると夢で逢える確率が高かったから。

今夜もきっと会えそうな気がする。

二人はそう思いながら受話器を置いた。

「わっ~本当に綺麗だ」揺は台所の窓から見える月を見て微笑んだ。


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